優しい君に恋をして【完】





優はまた、こぼれ落ちる私の涙を指で拭った。



「せっかく俺の親が


赤ちゃんの頃に 聴こえるようにしてくれて


しゃべれるようにしてくれたから……



お兄ちゃんが 俺のために 


手術を受けた病院の 耳鼻科医になってくれたから……




そのためにも俺は


再手術を受けたいと思う




大丈夫だよ 



手術をしてくれるのは


赤ちゃんの時に手術をしてくれた先生と


同じ先生が執刀医だから



それに 手術してくれるチームの中に


お兄ちゃんもいるから



大丈夫だよ 絶対に」




私は両頬にある優の手に、


そっと自分の手を添えた。



「もし、手術しても聞こえなかったら?」




私の口元を見て、優は目の前で笑った。




「気持ちは変わらないよ



堂々と生きていくって決めたんだ



それに



再手術を受けないで 聴こえないままよりも


再手術を受けて 聴こえないままの方が



後悔がないから」




私は両頬にある優の手をぎゅっと握った。



「痛いの?


いっぱい切るの?


いつ?



どのくらい入院するの?」




一気に質問攻めにした私に、優が噴き出して笑った。



「大丈夫だよ  耳の後ろを少し切るだけだから



だから髪を切ったんだ


入院は1週間ぐらいだけど



それから2週間後に 外の機械から中の機械に音を入れて

機械の調整をするから



しばらく東京のお兄ちゃんの家にいることになる




手術は 来週の水曜日



東京には 明後日行く」














< 170 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop