優しい君に恋をして【完】
帰り道、
「ゆっくり歩いて帰りたい」と言ったら、
優が手を繋いできて、私の家の方向へと歩き出した。
薄暗い中、住宅街に入ると、
シーンと静かになった。
優は、何かを探すように周りを見ていて、
「どうしたの?」と聞くと、
「なんか、音がするから.......」
と、首を傾げた。
音?
静まり返った夜道。
なんか、音するかな......
ゆっくりと歩きながら、耳を澄ませると、
ひとつの音が気になった。
私は優の手を引っ張って、立ち止まった。
「音、止まった?」
優はしばらく首を傾げて、考えていた。
そしてまた、私が優の手を引いて歩き出すと、
「なんだ、下駄の音か.......」って、
私の足元を見て笑った。
すごいと思った。
これだけ静かなところなら、下駄の音まで聞こえるんだ。
「優?」
優は、ぱっと私の方を見た。
「いっぱい音を聞いて、疲れなかった?」