優しい君に恋をして【完】
食べ終わり、
優はコーヒーを飲んで、マグカップをテーブルに置いた。
「優って、腕が長いね」
ワイシャツの袖を捲った優の腕、
前から思っていたけど、
隣から見てあらためてそう思った。
「そうか?」
優は腕を前に伸ばして、自分の腕を見た。
ちょっと筋肉質な、男らしい腕。
「長いよ」
隣から私も腕を伸ばして、優と比べてみると、
あたりまえだけど、優の方がずっと長い。
「手も大きいね。指も長いし」
私がそう言うと、腕を戻して、
私と手のひらを合わせて、手の大きさを比べた。
あらためてその大きさを感じると、
やっぱり男なんだなって、きゅんとしてしまった。
「最初ね、優が手話をしているのを見て、
長くて、綺麗な指だなって思ったんだよ」
手を合わせたまま、優は私を見て、
優しく微笑んだ。
そしてそっと私から手を離すと、
《ありがとう》と、ゆっくりと手話をして、
また、その長くて綺麗な指を動かした。
《愛してる》
あいしてる.......
優は目をそらして、またコーヒーを飲んだ。
嬉しい......
嬉しいけど.......
「言って」
「ん?」
「手話じゃなくて、ちゃんと言って!」
「やだ」
「えええーーー!!言ってよ!!」
優の腕を掴んで、ぶんぶんと振った。
「ばか、こぼれるだろ」
優は、マグカップをテーブルに置いた。
「ちゃんと声で聞きたい!」
「絶対、やだ」
「優のばかぁー!!けちぃー!!」
「じゃあ、俺そろそろ帰るから」