お隣さん

脱出開始




 とりあえず、目一杯腕を伸ばしてカーテンを閉めた。

 ーー怖いし。

「電気もつけましょ。明るい方が何かと便利よね、うん」

 怖いと独り言が増えるらしいと、身を持って分かった。分かりたくなかったけれど。

 ーーパチッ

「……あれ?」

 ーーパチッ、パチッ……

 何度スイッチを押しても、電気がつく気配はない。またこの怪奇現象によるイジワルかと思ったが……

「あ、ブレーカーかしら?」

 ブレーカーは、確か玄関にあったはずだ。
 もう一度玄関にとんぼ返りして、ブレーカーを探す。

「ーーあった!」

 一つのレバーで管理されているらしく、そのレバーが下に下りていた。

「これを上げれば、電気はつくのね」

 レバーを握って、上へ引き上げた。

 ーーヴィー……ジジ、ウィー……

「ついた!明るい!」

 手をたたいて喜ぶとーー

 ーーガシャンッ

「あ」

 また真っ暗闇に戻ってしまう。ブレーカーがまた落ちたようだ。

「ずっと持って支えておくわけにもいかないし……。紐でもあれば、くくりつけて固定出来そうだけど」

 とは言え、私は部屋着姿なのだ。携帯以外は何も持っていない。

「ーーって!ああ!!携帯!!!」

 外との交信手段が私の手の中にあるではないか!
 急いで画面を見て、電話をーー

「……圏外」

 むなしくも、アンテナは一本も立っていない。変わりに表示されている『圏外』の文字の腹ただしいことこの上ない。

「なによ……。この部屋、アルミホイルでグルングルンにラッピングされてるわけ?」

 携帯をアルミホイルで包むと圏外になるのは知っていたが、部屋事包んでも圏外になるのかは知らない、知りたくもない。

 圏外の携帯なんて、夏場の壊れた扇風機ぐらい役に立たないし、腹ただしい。

「とりあえず、ライト変わりね……」

 電気がつくまでは、ライトとして役だってもらおう。

「それから、どうしようかしら……」

 部屋の間取りを思い返しながら、考えてみる。

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