お隣さん

間取り




 まず、玄関を背に部屋を見渡すーーとは言っても、暗いからほとんど記憶を頼りに思い出すかたちだ。

 玄関を背に右手がお風呂場やトイレなど水回り。
 左手がキッチン。
 正面がダイニングになっていて、その奥に部屋のドアが二つ並んでいる。
 右側の部屋が最初に入った部屋。奥にベランダの窓。
 左側も同じ大きさの部屋になっている。同じようにベランダの窓もある。

「あ」

 左側の窓からなら、ベランダに出られるかも……?

 かすかな希望を胸に、左側の部屋に入ってみる。
 窓沿いにベッドが一つと、壁に向かって机、隣に棚があった。

 そっとカーテンに手を伸ばすーー

 ーーシャッーーベタベターーシャッーー

「ダメだ。ノーだ。不可ノーだ」

 こちらの窓からも出られそうにない……。

「むぅ……厳重ね」

 ダメ元とは言え、ほんとにダメだとヘコんでしまう。

 ぼふっと側のベッドに座り込んでため息を吐く。

「あーもー……いたっ!」

 そのまま倒れ込むと、後頭部が固い物にぶつかった。なにかと探ってみ
ると、枕の中に何か入っている。

「どうにか出せないかしら?」

 机や棚を漁ってみると、ハサミがあった。ついでに、鉛筆や新品のノートも見つけたから取っておく。
 ハサミで枕を切り、中を探る。

「取れた!ーードライバー?」

 枕の中にあったのは、プラスドライバーだった。……どうしてこんなものが?

 他にも何かないかベッド あちこちを探してみたが、シーツにパッチワークがあっただけだった。数字の5の形で、かわいかった。

「住んでるの、女の人なのかしら。縫い目も綺麗だし、小物もかわいい」

 住んでいるのが、おそらく若い女性だという目当てはついたものの、脱出の手掛かりは見つからない。

「……喉渇いちゃったな」

 キッチンで何か拝借しようかな、お腹も空いたし……。


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