別れの理由
それが、彼女の哀しい目の原因だった。
「あいつは、奴が組の人間だってことを知らなかったんだ…出逢った頃はな。
俺らも、あんまり詳しいことは聞かされてなんだが、
あいつはそれを知って、相当悩んでいたことは覚えている。だから俺らは、奴が豚箱に入ったと聞いて正直胸を撫で降ろしたんだ。それで、俺らはあいつに変な虫がつかないように見張っていた。そんじゃそこらの男では、奴が出所してきても太刀打ちできるはずがない。返って、あいつを苦しめることになる。それをわかっていたからな。そして、拳人、お前がこの街にやってきたんだ。そしてあいつはお前を好きになった。最初は、奴に面影を重ねてるのかと正直思っていた。だけどな、今のあいつは、あの頃のあいつとは違う。今は、それしか俺らには言えないが……」
そう言って、裕二が目を落とすと、
「たぶん奴はそろそろ出てくるはずだ」
成一郎が、俺を寂しそうに見つめて言った。