別れの理由
「奴に会ってきたんか…?」
「え?」
シャワーを浴びてきた、ガウン姿の彼女に俺は訊いた。
「せやから、奴に会うてきたんかって聞いてんねん!」
「奴って?」
かなり声を荒げて訊いた俺に怯えたように、
彼女は少し震えながら訊き返してくる。
「奴、言うたら、奴や!」
俺は、そんな彼女の態度が妙に腹ただしく、
彼女のガウンをめくり、刺青をわざと露わにさせた。
「やめて!……もうなんでもないって言ってるでしょ!」
彼女が哀しそうに俺を見た。
「そやけど会いに行ったんは間違いないやろ?」
俺は、
そう訊きながら、
彼女に嘘を突き通してほしいと、なぜか願っていた。
それなのに彼女は……。
「うん…ごめん…」
俺の思い通りには答えてはくれなかった。
俺はその時、
自分がそんなに強くないことを知った。