別れの理由
二人はお互い言葉が出せなかった。
俺は、自分が何を見つめているのかもわからなかった。
いつも、二人にだけは聞こえていた、
優しい空気の音も聞こえなかった。
しばらくすると、すっかり髪がかわいた彼女が口を開いた。
「でも…拳斗が怒るような理由で会いに行ったんじゃないから……」
「わかってる」
そんなことはわかってるんだ。
「ずっと手紙来てた。待っててくれって…でも返事は書けなかったの。
自分でもどうしたらいいかわからなかったから……」
「それで?」
俺は少し冷たく訊いた。
彼女は言った。
「別れを告げてきたの。あたしは、拳斗と…普通に生きたいから………」
そんなこと、俺には、わかってたんだ。