半分こ。


向かったのは`刀鍛冶'。

何処にでもありそうなこの店は
りんの行きつけだ。

何の特徴も無いのだが刀の揃えがいい。
青色の のれんをくぐる。

「よ。じーさん。」

「…風雅様!…お久しぶりですなぁ。」

涼しそうな着流しに額に浮かんだ汗。
がっちりとした体躯。
気前のいい店主は
りんを奥の畳に座らせると
温かいお茶と茶菓子を出した。

りんは甘えることにする。

川沿いに建つ店からは桜が見える。
最近は 屯所に遊びに行く前に
ここの桜を見るのが日課になってきた。

城はまた大騒ぎか、
と想像していると何だか隼人に申し訳ない
何て柄にもなく思ってしまう。


はらはらと散る花弁は
何処か武士の生き様を思わせる。
綺麗なのに切なくなる。
この何とも言えない感じが癖になる。

「また来る。」

刀を一通り見たが
今日は目ぼしいものがなかった。

「えぇ。…何時でも待ってまっせ。」

「あぁ。ちゃんと戸締まりしろよ最近は物騒だからよ。」

軽く手をあげ のれんをくぐる。

が、
誰かにぶつかる。

背は高い。

「痛ってぇなー。…誰だよ。」

――土方だった。

「何だ。り……っ風雅か。」

「……痛いです。」

「ごめんごめん。」

土方は適当に謝ると
`団子でも買ってやろう'
とりんを連れて店を出た。

(この店に用があったのでは?)
と思ったが、聞かない事にした。


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