体育館12:25~私のみる景色~

「おい! 恭也、待てよっ!」


 慶ちゃん先輩が呼び止めるけど、見向きもしなかった。


 その瞬間、涙がぼろぼろこぼれおちて、床に小さな水たまりができた。


「……お前、恭也のこと好きなんだな」


 座り込んで泣きじゃくる私の背中に、慶ちゃん先輩の声がかかった。


 その声はどこか切なげで、苦しそうで。


 顔を見ようと顔を上げたけど、涙でにじんで見ることができなかった。


 私の背中をなでる骨ばった手は優しくて、余計に涙があふれた。


 その間に本鈴も鳴ったんだけど、しばらくその場から動けなかった。


 こんな腫れ上がった目じゃ教室にも戻れないし、なにより授業を受けられる状態なんかじゃないもん。


 
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