体育館12:25~私のみる景色~

 ポケットに入っていたせいで、溶けて角が丸くなってしまったチョコレート。


 それを見ると、なんだか泣けてきた。


 佐伯先輩、少しは私のこと、見ていてくれたりするのかな?


 ほんの少しだけ、期待してもいいですか?


「先輩、嬉しいです。ありがとうございます……」


「チョコは少し溶けたけどね」


「それでも嬉しいですっ」


 嬉しすぎて涙が出そう。


 だけど、佐伯先輩を見上げて笑って見せた。


 先輩は少しびっくりしたような顔をした後優しく笑って、私の頭をぽんぽんとなでてくれた。


 今日、会えないかもしれないと思ってた。


 会えても、話してくれないんじゃないかってビクビクしてた。


 だけど、会うことができて自分から話しもできて、昨日のことでは怒ってなかったみたいだけどちゃんと謝れたし、プレゼントももらっちゃった。


 大きな温かい手のひらで、触れてもらえた。


 偶然と、ミナミ先輩の気遣い、ほんのちょっぴりの私の勇気が重なり合った結果。


 佐伯先輩との距離が、1センチくらいは縮んだかなって、そう思えたんだ。


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