体育館12:25~私のみる景色~

 佐伯先輩の笑顔も見られたし、怒ってなかったみたいで一安心。


 それになんだか、今までで1番佐伯先輩を近くに感じられた気がした。


 嬉しくって自然と頬がゆるんできちゃう。


「そうだ、宮下さん。はい、これ」


「えっ、はい?」


 佐伯先輩が右手をごそりとポケットに突っ込んだ後、その手を私の方へ差し出してきた。


 条件反射みたいな感じで、手を上に向けて差し出すとそこに何かが落とされた。


 バラバラと、いくつものカラフルな包みと、透明なセロファンにくるまれた四角くて甘い香りを放つチョコレートが、たくさん私の手に降ってきた。


 佐伯先輩が片手で掴んでいたそれらは、私の両手に軽く一杯分。


「先輩、これって……」


「あまりもんだけどね。会えたら渡そうと思って持ってきてたんだ」


 佐伯先輩はふわりと笑った。


 これってもしかしなくても、佐伯先輩のクラスで売ってた駄菓子だよね?


「私、もらっちゃっていいんですか……?」


「あまりもんだから、どーぞ」


 私の手のひらに乗る小さな包み。


 ねえ、佐伯先輩?


 あまりもんだなんて言うけど、それは嘘ですよね……?


 だって、佐伯先輩と慶ちゃん先輩のいるお店の品物が余るなんて、ありえないもん。


 みーくんとここに来るとき、通りすがりの人が言ってたんだよ。


 『駄菓子もう完売だって!』って、残念そうに女の子が言ってたこと、知ってるよ。


 ねえ、佐伯先輩。


 これは、私のためにとっておいてくれたんだって思っていいですか……?

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