体育館12:25~私のみる景色~

 だけど、気づいてもらえるまで耐えられるのかな。


 古くてボロボロのここは隙間風がすごくて、本当に寒い。


 思ったよりも中は清潔だったのが唯一の救いだった。


 全然埃っぽい感じもしないし。


 だけど、暗くてほとんど何も見えない。


 ぼんやりと見えたマットらしきものに座って、少しでも体温を逃がさないように身体を丸めた。


「なんでこんなことになっちゃったんだろうなあ……」


 佐伯先輩に近づいたから?


 慶ちゃん先輩と仲良くさせてもらってたから?


 抜け駆けみたいなことしたから、バチがあたったの?


 だとしたら、もっと前にこんな状況になってたはずだった。


 もっと前に、周りに知られててもおかしくなかったはずなんだよ。


 ……ううん、今まで運が良かっただけなのかもしれないね。


 危機的状況なのに、妙に落ち着いている自分に少しだけ笑えた。


 ……もし、このまま誰にも見つけてもらえなかったら。


 私はここで、たった一人で死ぬってことになる。


 そういうことだよね?


 サエさんの言う痛い目って、こんなに怖いことだったんだ……。


 でも、こうなったことに後悔は感じてないの。


 こんなことになるなら、先輩たちと関わらなければよかったなんて、思えないんだよ。


「佐伯、先輩……」


 薄れゆく意識の中、遠くで午後の授業開始のチャイムが鳴るのを聞いた。
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