体育館12:25~私のみる景色~

 どうして佐伯先輩は怒ったり、うろたえたりしたのか。


 なんで、電話に出てくれたのか。 


 違う、そうじゃなくて。


 なんで、助けてくれたりしたの?


 お礼をしたいからって呼び出しに、応えてくれようとしたの?


 “どうでもいい”、そう言ったのに。


 なんで、どうでもいいはずの私に、そんなに優しくしてくれたの……?


 どれだけ考えたって、到底わかるはずもなかった。


 佐伯先輩に誤解されたあの時のことを思い返しては、疑問が濃くなるばかりだった。


 怒った理由は、なんとなくわかる。


 私がお礼したいって呼び出したくせに、慶ちゃん先輩と一緒にいたから。


 それに、佐伯先輩からしたらイチャついているように見えただろうし。


 呼び出しといてなんなんだよって思うのは当たり前だと思うから。


 メールにだって、気が付かなかったわけだし。


 それに、佐伯先輩の家庭は想像を絶するほど複雑だった。


 私がとった行動が、佐伯先輩を感情的にさせたんじゃないかってことも考えたけど。


 しっくりくる答えなんて見つからなかった。


 でも、よくよく考えてみて思った。


 バカで、単純で、鈍感な私なりに。


 だって、もし本当に佐伯先輩が私のことをどうでもいいって思っているなら、私なんか放っておくでしょ?


 倉庫に閉じ込められたときだって、探してくれないでしょ?


 慶ちゃん先輩と一緒にいるのを見たところで、あんなに冷たい顔をする必要なんてないはずなんだよ。


 だって、あの時の顔はまるで、嫉妬しているかのようで……。



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