身代わり姫君の異世界恋綺譚
「怪我は大丈夫とは……他に悪い所でもあるのか?」

清文が清雅の言葉が気になって聞いた。

「……はい、元の世界へ帰りたがっています。それと屋敷の女房たちが……」

自分と父上が真白の肩を持てば、女房たちはおもしろくないだろう。

表面上は普通に接しても、自分たちがいない時に陰湿な事をされかねない。

――昨日、紫鬼が言ってくれたから大丈夫だとは思うが……。

牛車が大きく揺れて止まった。

「右大臣家へ着いたようだな」

いつも柔らかい表情の清文が、きりっとしまった真剣な顔つきになった。

ふたりはかすかな物の怪の気配を感じ取っていた。

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