身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紅、去れ」

「紫鬼様っ!」

紅の近づく音がして障子が開いた。

横たわり真白を腕の中に抱いていた紫鬼は顔だけ紅の方へ向けた。

紅の目に真白の白い胸元が見え、2人から目をそらした。

「分かっただろう? 私は真白に夢中なのだ」

「この者は静蘭様ではございません」

顔をそむけた紅は言った。

――紫鬼様がわけの分からない小娘に夢中だなんて……。この娘に亡き清蘭様を見ているのだろうか。最初に見た時、あまりにも似ていて驚いた。

「むろん、そんなことぐらい分かっている。紅、真白が目を覚ましてしまう。早く去れ」

紫鬼の冷たい言い方に傷つきながらも紅は膝を付いて頭を下げると消えた。

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