身代わり姫君の異世界恋綺譚
「心臓の鼓動がない者など、私は惹かれない」

「紫鬼……」

紅い目で見つめられると、何も考えられなくなる。

「じゃあ、じゃあどうして私を助けてくれるの?」

「……それは……私にもわからない」

――わからないのに抱きしめるなんておかし過ぎるっ。

「……気の流れが変わったな」

紫鬼の呟きに、真白は小首を傾げる。

「身体が軽くなっただろう?」

真白はもぞもぞと紫鬼の腕の中から抜け出すと、一歩後ろに下がって立った。

「そう言えば……眩暈を感じなくなったみたい」

真白の身体が楽になった頃、清雅と従兄弟の清重が陰陽師寮の結界をより強くしたのだった。

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