身代わり姫君の異世界恋綺譚
「いや、人間だが強力な怨霊に身体を乗っ取られていた」

「ここは陰陽寮なのに……」

1週間前に清雅と清重の張った結界でより強い邪気も近づけないと、清雅は自信満々に言っていた。

「清雅に調べさせている」

「……紫鬼、助けてくれてありがとう」

紫鬼に真白はお礼を言った。

――紫鬼がいなければ、私はこの世界では生きていけない。

その事が真白の気持ちに影を落とす。

――紫鬼が私に飽きたら? 紫鬼が私を嫌いになったら?

そう思うと気持ちが落ち込んでしまう。

「どうしたのだ?」

真白の笑顔に悲しみを見た紫鬼はそっと茶色の頭に手を置く。

ふわふわとした柔らかい髪に指を差し入れ梳く。

真白が今にも泣き出しそうな瞳を向けた。

「泣くな……いつでもお前を守ってやる」

紫鬼は頬を伝う涙を唇で吸い取った。

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