身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白を見つけたのか……?」

清雅は紫鬼が今まで立っていたはずの場所を見て呟いた。




「し……き……助けて……」

忠臣の唇が離れると、真白は呟いた。

身体が自由に動かず、大きく口も開けない。

この時の真白は、忠臣の邪悪な心に蝕まれはじめていた。

「この期におよんで他の男の名を呼ぶとは」

忠臣は口元を歪めた。

「忠臣様、この者の様子がおかしいです。すぐに薬師に見せた方が良いかと」

「うるさい! 道重!」

忠臣が叫んだ時、目の前に紫色の髪の背の高い男が立った。

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