身代わり姫君の異世界恋綺譚
「くっ!」

道重は絶体絶命を感じていた。

――この男は本気だ。見たこともない紅い目。一瞬で切られるだろう。

忠臣の重みが無くなり、真白はやっとのことで上半身を起こした。

「紫鬼っ! だめっ!」

今にも紫鬼の持っている剣が振り上げられそうで真白は精一杯叫んでいた。

背後から真白の声が聞こえ、紫鬼の手がピクッと動いた。

「紫鬼、ダメ! 殺さないでっ!」

自分の為に人殺しはやめて欲しい。

真白はふらつきながらも立ち上がり一歩ずつ紫鬼に近づく。

「紫鬼っ。ダメだよ……殺さないで――」

紫鬼へたどり着く前に真白は意識を手放した。

華奢な身体が畳の上に崩れ落ちる。

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