身代わり姫君の異世界恋綺譚
――もしかして……私は事故で意識不明って事はないよね? 植物人間ってやつ……それでずっとこの世界の夢を見ているとか……。そして紫鬼は想像の人だったら……。

そう考えると真白は怖くなった。

ブルッと身体が震えると、紫鬼の目蓋がゆっくり開いた。

「どうした? 真白。寒いのか?」

紫鬼が腕をのばして真白の身体を抱きこむ。

真白は涙を流していた。

「なぜ泣いている?」

「……この世界は本当に現実なのか……って……思ったら怖くなった……」

紫鬼の指が涙を拭う。

「もちろん現実だ。この世界で私たちは生きている」

ゆっくりと髪を撫でられると安堵感が生まれる。

――そうだよね……紫鬼はここにいてくれる……これが現実の世界……。

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