身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

「おい! 朝餉だ!」

眠りを妨げる大きな声。

「まったく! 起きるのじゃ! 私はお前のせいで一睡も出来なかったと言うのに」

小言を言う声に、真白は目を開けた。

「あ……」

――ずっと悪い夢を見ているのかと思っていた。

しかし、目の前にはあきらかに不機嫌そうな清雅。

夢じゃなかったんだと、がっかりした。

起き上がらなければ、ご飯が食べられない。

昨日の昼以降、何も食べていない真白のお腹は鳴りそうなほど空腹だった。

真白は傷む背中にむち打ち起き上がると、置かれたお膳の所まで時間をかけて行った。

寝る時よりも更にズキズキと身体が痛む。

「お、おいっ! その格好は何だ!」

突然真っ赤になった清雅が怒鳴った。

「えっ? その格好って……?」

蒸し暑くてピンクのコートとその下のセーターを脱いでしまったので、真白が今着ているのは水色のブラウスとデニム地のスカートだ。

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