身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白を再び布団に戻らせると、清雅は後で朝餉(あさげ)を持ってくると言って部屋を出て行った。

スラリとした身長で、紫色の髪を持つ紫鬼はと言うと……いつの間にかいなくなっていた。

「どうしよう……私はどうしたらいいの……?」

真白は心細げに呟いた。

出来ることなら、外に出て彼らの言うような世界なのか確かめたい。

しかし、身体を起こしているのが辛い真白は再び布団に戻るしかない。

「ここはあのお寺の敷地なのかもしれいよね」

――少年たちに襲われたのは、お寺の塀の側。

「もしかして……私は……本当に異世界トリップしちゃった……の?」

――きっとそうに違いない。舐めただけで傷があっという間に治ってしまうなんてありえない。

「あの人は……何者……?」

――瞳が赤いなんて映画で見た「吸血鬼(ヴァンパイア)」しか知らない。紫鬼って人は吸血鬼? 映画の吸血鬼も傷口を舐めただけでヒロインの傷を治していた。

考えていると、背中の痛みも増してきて真白は目を閉じた。

そしていつしか眠りの世界に落ちた。

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