身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紅、お前の顔は二度と見たくない」

真白の身体を布団に横たえると、紫鬼は見えない紅に言った。

障子越しの紅の存在。

「紫鬼様! 申し訳ございません。清蘭様に操られてしまい真白様を外に連れ出してしまいました」

「今後、私の前に顔を出せば殺す」

冷ややかな声に紅は絶望的な表情を浮かべた。

「……紫鬼様」

涙が溢れ出る。

だが誰も同情などしないだろう。

紅は真白を守らなければならない立場だった。

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