身代わり姫君の異世界恋綺譚
その手を紫鬼は強く払った。

払われた手が赤くなる。

それを見て清蘭は笑う。

『良いか? 紫鬼様、この身体は真白。傷つければ真白が痛むのじゃ』

「私に触るな」

紫鬼の紅い瞳が更に色を増す。

『それは嫌じゃのう。わらわは紫鬼様に抱かれたいと言ったであろう?』

その時、外で稲妻が光ったかと思った瞬間ドォォォ――ンと酷い音が響いた。

屋敷内からは女房達の恐怖の悲鳴が聞こえた。

< 286 / 351 >

この作品をシェア

pagetop