身代わり姫君の異世界恋綺譚
無表情な紫鬼に清蘭はゆっくりと近寄ると手を伸ばす。

ただ立ったままの紫鬼の身体に腕を回したくましい胸に頬を寄せる。

『わらわの気持ちを考えてくださいな。紫鬼様に会えぬまま苦しい一夜を……そしてわらわの心臓は止まった。紫鬼様がいればわらわを助けられたはず』

自分が死んだのは紫鬼のせいだとばかりだ。

『少しは償ってくださっても良いはずじゃ。わらわを愛してくださいな』

胸につけた顔を上げ背伸びをすると、紫鬼の唇に口付けする。

< 291 / 351 >

この作品をシェア

pagetop