身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

「み……ず……」

真白は喉の渇きを覚えて目を覚ました。

「真白っ!」

見守っていた紫鬼は、真白の身体を起こして水を口に当てる。

しかし飲み込むことが出来ずに、口の端から水が垂れ、着物を濡らしていく。

紫鬼は水を口に含むと、真白の唇にそっと流し込む。

「あ……りが……と……」

衰弱した真白を見るのは辛い。

清蘭を祓う方法がまだ見つからないのだ。

この上なく大事そうに、真白の身体を床につける。

「……し……き……つか……れ……てる……」

紅い瞳にはいつもの覇気が見受けられない。

――私の目がおかしいのだろうか……。

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