身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白はもういない」

紫鬼は呪術を口にしながら光る剣を清蘭の周りを三回振り真白の身体から清蘭が逃れられないように術をかけた。

清蘭の身体は金縛りにあったように動けない。

『これを解くのじゃ! 真白の身体じゃぞ!?』

紫鬼の呪術で縛る光はぎりぎりと身体を締めつけるようだ。

『く、苦しい! 解くのじゃ!』

光の中でもがき苦しむ清蘭を見る紫鬼の瞳には何の感情もうかがい知ることは出来ない。

悶える清蘭から真白の姿に変わる。

『紫鬼、苦しいの。やめて……』

その言葉はまさに真白の口調。

「紫鬼っ! 真白が苦しがっている!」

清雅がそれを見て止めに入ろうとした所を清文に押さえ込まれる。

「清雅! やめなさい。あれは清蘭だ」

清文は清雅を後ろから羽交い絞めにした。

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