身代わり姫君の異世界恋綺譚
清雅が出て行くと、紫鬼は肘を布団に付いて真白の唇に自分の唇を重ねた。

真白の穢れを取るには口付けが一番手っ取り早い。

――起きているうちにこんな事をしたらきっと泣かれてしまうだろう。

紫鬼は真白の受けた穢れを吸い取るように唇を合わせた。

少しすると真白の熱が正常に戻った。

「清文に言って結界を強くしてもらわねばな」

――このままでは真白の身体が持たない。

自分が傍にいれば取り払う事も出来るが、いない時に穢れを受ければ真白の命は……。

これほどまでに穢れを受けてしまう人間を紫鬼は知らない。

――なぜこの世界へ来たのだ……真白。

紫鬼が考えに耽(ふけ)っていると、真白が寝返りを打ち背を向けた。

サラサラと流れ落ちるような髪に、紫鬼は引き寄せられるように手を伸ばした。

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