身代わり姫君の異世界恋綺譚
「どうして……」

そんな言葉しか出ない。

「突然やって来て、紫鬼様の関心を惹いたから」

「紅さん……」

――紅さんは紫鬼が好きなんだ。

「紫鬼が私を気にかけてくれるのは、え……っと、私が穢れを受けやすい身体だからなんです」

――紫鬼は私が恋愛感情を持ってはいけない人。

「それだけで紫鬼様が気にかけると思っているの? 清雅様以外の人間を今までは気にかけなかったというのに」

――そんな事言われても……。

「私は貴方を認めないわ」

そう言い捨てると、紅は御簾を手であげて出て行った。

「認めないって……」

――初めて会った人に、敵対されるなんて……。

どっと気分が落ち込んでいく真白だった。

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