身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

陰陽の頭、清文に呼ばれた清雅は広い部屋に入った。

そこには清文と20歳代と思われる山吹色の内掛けを羽織った女性がいた。

「おお、清雅。こちらへ来なさい」

手招きして自分の横に座るように言う。

清雅は軽い足取りで父親の横に座った。

そして目の前の女性を見る。

女性は女房らしく目を伏せて、話しかけられるのを待っていた。

「清雅、こちらは右大臣家の琴姫殿の女房の山吹殿だ」

「山吹殿。これは私の息子 清雅。貴方のお悩みを助ける者です」

清雅が驚いて父親を見る。

――私が助ける……?

「お噂は聞いております。清雅様。山吹と申します。宜しくお願い申し上げます」

両手を畳みについて挨拶をする山吹はどこぞの姫のような気品が感じられた。

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