身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白の部屋に入ると、清雅は飛びのいた。

「な、なんなのだ!? 畳が濡れているではないか!」

「それが……。私が来た時にはすでに濡れていました」

――いったい何があったのだ?

「紫鬼! 紫鬼!」

真白をすぐに見つけることが出来るのは紫鬼しかいない。

すでに外は暗く、穢れを受けやすい真白はどこかで倒れているかもしれない。

清雅は紫鬼の名前を呼んでいた。

近くにいれば、来てくれるはず。



「どうしたのだ? 清雅」

紫鬼がふっと目の前に現れた。

「紫鬼っ! 真白がいなくなったのじゃ!」

清雅の慌てる姿は、紫鬼の目からも珍しい。

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