他人の彼氏
「おっ、早かったな?」

「近くだから・・・」

「つーか、まさかとは思うけど
全荷物が
そんだけなわけじゃねぇんだろ?」


バッグ2つにリュック1つ姿の私を見ながら、そう聞いてくる。


「これだけ・・・」


「お前、
その姿は
完全に家出少女じゃねぇか」


そう言われても・・・


「家の主には会えたか?」


首を横に振りながら
やはり、思い出されるのは
ベッドでスヤスヤと眠る
彼女の姿であり・・・


「せめて一言
お世話になりましたくらい言って出てきた方がいいんじゃねぇのか?」


お兄さんの言う通りだ。


それは、礼儀として当たり前の事であり
大人として常識な事なのに


今の私には

それが辛すぎて

もし、自分自身が押しつぶされそうになった時に

黒崎伸治が目の前にいると

自分で、何を口走ってしまうのか分からないくらい

好きと、嫉妬で感情が渦巻いている。


「・・・まぁ、
俺が、
どうこう言える立場じゃねぇけど・・
未成年じゃねぇみたいだし
心配しなくても
俺ん家置いてやっから」


思いがけない言葉に
顔を上げた。


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