他人の彼氏
その音を聞く度
楓さんの表情が曇って・・・


ため息がこぼれて・・・



「か・・帰った方が
いいと思います・・・」


人に迷惑をかけてまで

自分の事だけを考える事は

やっぱり・・・

間違ってるから・・・。



「え?・・・」


急の事に、楓さんが
ポカンとした表情で
聞き返してきた。


「ちゃんと・・・
帰った方がいいです」


「そ、そうよね?
ほら、伸治聞いたでしょ」


「あぁ。
じゃあ、帰る」


そう一言言うと

立ち上がり、

そのまま私の方を見る事なく

出て行ってしまった。


「何か・・・居候ちゃん
ごめん・・ね?」



「いえ・・・
私こそ、迷惑かけちゃって
ごめんなさい」



「ううん、それは・・・いいから。
じゃあ・・私、帰るけど・・
大丈夫?」



「大丈夫です。ありがとうございます」



「そう・・・?
じゃあ、また来るね?」


「はい」


精一杯の笑顔を浮かべて
楓さんを送り出し・・・


玄関の扉が閉まった途端

寂しさで押しつぶされそうになる。
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