その男、小悪魔につき。【停滞中】



彩月先輩からは他の女と違って、計算しているようなものは見受けられない。


だから心配になるし、目が離せないのだ。


男を100パーセント信用してはいけないんだと。


出会った日に聞いた男の話を聞いて余計にそう感じてしまう。



あの無垢な笑顔でずっといてほしい。



そこまで考えて俺は自分に対して笑えてきた。


何も彼女に話していない、いや話す気のない自分が何を言っているのだ。


しかし今この瞬間、彼女の手を引いて歩くと安心できる。


横を見ると素直に俺に手を繋がれて歩く彩月先輩。



「……良いのか?」



これでどんどん俺の記憶から彼女を消していって、別の誰かで埋めていって。


俺の中でさえ彼女が過去になって、良いのだろうかーーー


千尋sideおわり





< 60 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop