我等オカ研特捜部
 この二軒の家は三人が予想した通りに建設途中に倒産した会社が放棄したものらしい。

 最近出来たBARの為知名度は低く客の入りは悪いらしい。

 名前の由来は井戸が近くにあるかららしいが皿を数える怨霊が移住して来たせいで飲めないという事だ。

 マスターは元々西山のボス猿だった。

 欲が深かった若かかりしマスターは次第に近隣の民家を襲うようになり村人に追われたという。

 村人から重症を負わされたマスターは水晶の洞窟に逃げ込んだらしい。

 西山は今でも水晶が多く取れるが、猿にしか行けない崖上のそこは内部一面水晶に囲まれた洞窟があるという。
 
 死に行く彼の怨念が水晶で増幅されたのだろうか彼は化け猿になって蘇ったらしい。

マスター
「西山の化け大猿って言えば当時はそこそこのモンだったんだよい?」

荒木
「出たよ、昔は俺も悪かった話」

谷口
「規模が違うだろ」

小山
「失礼ですけど、その目は?」

マスター
「これはな」
 
 マスターが化け猿になると直ぐに村人に報復に向かったらしい。

 村人では手に追えず武士達が名を上げようと挑戦しに来たが負けなかったともいう。

 だが欲に目が眩んだマスターは罠にかかってしまい捉えられ、火炙りになりそうな所を罠を仕掛けた張本人である旅の僧がやって来て、欲に眩んだ目だけくり貫けば良いと言って逃がされたそうだ。

マスター
「それで目が見えなくなってしまったというか目が無い、コーヒーにも目が無いクヒヒヒ」

荒木
「じゃあ今は大人しいんですか?」

マスター
「目が無くなって大人になった。

 何も出来ない俺を、猿の時の子分どもが優しく介抱してくれてよい。

 それからは耳でジャズを楽しみ、鼻でコーヒーを嗅ぐ。

 そして舌で味わう。

 質素だけどこれが今の楽しみさ。

 あの坊さんのお陰で穏やかな気持ちになれたんだい」

小山
「じゃあ喫茶店にすれば良いのに」

マスター
「客層が飲んべえばかりで」

 マスターは老婆を空洞の眼孔で見た。

 話を聞いているうちに、どうやらこの周辺で起こる心霊現象は目の見えないマスターのせいである事も分かった。

谷口
「じゃあトンネルのお化けも?」

マスター
「近道だから通るよな、良く車に引かれそうになるわ、飛び乗ったりしたけど」

荒木
「廃旅館の幽霊は?」

マスター
「それも俺だ。廃品漁ってたんだよい」

小山
「なーんだ、じゃあ目の見えないマスターのせいで心霊現象じゃなかったんだ」

谷口
「ずれてるずれてるマスターも心霊の類いだって」

荒木
「じゃジェット婆さんは?」

老婆
「ジェット婆さんじゃない韋駄天の清子と呼ばれとる」

マスター
「今は清ばあって呼んでるけど」

清ばあ
「この店のアイドルや」

荒木
「妖怪の好みが分からない」

マスター
「荒木君の目は正しい、他の客も呆れてますからねい」

小山
「ジェット婆さんって何?」
 
 私は恐々コーヒーに口をつけながら聞いたのだった。

 

 
 

 
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