我等オカ研特捜部
 痛かった。

 電車賃の事である。

 更にいえばキツネうどんと稲荷寿司の価格も痛かった。

 高校生の私達には高過ぎて手がでない。

 帰りの電車賃を考え泣く泣く肉屋のコロッケで手を打った。

 私は必ず復讐を果たすだろう。

 いつの日かお腹一杯にうどんとおいなりさんを貪ってくれよう。
 
 その時が来るまでゆめゆめ忘れることなかれ。

荒木
「一口くれよ」

谷口
「先輩だろ?一口くれよ」

小山
「一年坊にはコロッケは早い。
 
 これは貴族の食べ物です。
 
 誕生日にでもママにねだりな!」

 お金が無く、勢いで来た男子二人は私のコロッケを狙っている。

 飢えた男の目とはこういったものか…恐ろしい

荒木
「そんのいいから買ってくれよ」

谷口
「土下座か?

 土下座すれば買ってくれるのか?」

 捨てられた子犬のような目に変わった金欠の二人に仕方なくコロッケを買ってやった。

小山
「有り難く食べなさい」

谷口
「60円位で偉そうにするな」

荒木
「明日返してやるよバーカ」

小山
「犬でも恩を感じるのに」

 秋の夜更けは早くもう夕日は沈みそうだった。

 暗くなった山道を進むのには勇気がいる。

 ましてや妖怪を確認してしまった三人には特に

谷口
「明日にしない?」

荒木
「暗いし怖いけど、明日来る電車賃がもうねーよ」

小山
「うーやだなー」
 
 三人はライトアップされた大きな神社に参拝し、その脇から山に登り始めた。

 谷口はしきりに口に手を持っていき、唾で眉を塗らした。

小山
「やめーや!汚い」

谷口
「ふふふ、馬鹿にされても最後に生き残るのは俺だ」

荒木
「狐がついておかしくなったのか、隊長」

谷口
「教えてやろう」

 谷口が言うには狐は人の眉毛を数えてその人間に化ける事が出来るらしい。

 それで昔の人は唾で眉毛を塗らし本数を誤魔化すのだという。

 それを聞いた私はドッペルゲンガーとクネクネの話を思い出し震えた。

 それを聞いた私と荒木も同じように所作を行った。

 しかし、キツネからすれば三人が鳥居が続く夜道を眉を擦りながら歩いている姿は十分狂気な絵だったであろう。

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