愛しさを抱きしめて
「日和、ここにご飯置いとくからな…」
返事をしないまま、ベットで蹲る。
食事も手につかないまま一週間が過ぎた頃
「見ていられない!!」
そう言って祖父と祖母はわたしを父から離した。
それから一ヶ月ほど入院して、精神科への移動が決まった。
父と母とわたしで微笑んでいた家族円満なことを消したくて、唇を噛み締めた。
「日和…」
病室へ入ってきた父は痩せ細っていて、26歳とは思えないほど疲れているように見えた。
父はわたしの手首を優しく包み込み、悲しそうな表情をした。
「すまなかった…、すまなかった、日和…」
わたしは視線を父へ向けて、頬に伝う涙。
「許されるとは思っていない、もう一回俺と暮らしてみないか?」
コクンと頷くわたしに、今度は父が涙を流す。
それから父は仕事を早く切り上げ、帰ってわたしとの時間を大切にしてくれた。
わたしが眠りにつく頃にはパソコンをカタカタと鳴らす音が大概毎日していた。
小学校に上がったわたしは料理を調べて、作れるようになっていた。
父のために毎日暖かい夕食を準備して待っていた。
高校に入学からは父も出張に行く日が多くあり、一人暮らし状態になっていた。
そこで夢は途切れた。