愛しい人
トイレから出ると、久馬くんが待っていた。


『大丈夫?』と聞いてくれるわけでもなく、ただボーっと。


つい、ムッとした。


「どうしてつっ立ってんのよ!?」


そう言うと、久馬くんが私を抱きしめた。


「なによっ!抱きしめたって、悪阻は治まんないんだからっ!」


久馬くんなりに心配してくれているのに…可愛くないことを言った。


「でも、気持ちは落ち着くだろ」


「ううっ…」


なんだかわからないけど久馬くんの胸で泣いた。

「今日は、一緒に風呂に入ろうか!?」


そんなことを言ってくれるなんて…。


「実家、帰らなくてもイイ?」


「帰るな。辛かったら八つ当たりしてもイイ」


そう言ってくれた久馬くんの顔を見た。


「時々、お風呂、一緒に入ってくれる?」


「ああ」


「約束のキスして」


優しく口づけて、一緒にお風呂に入った。悪阻は辛いけど、久馬くんとの赤ちゃんだから、今度は絶対に守ってあげたいと思った。


< 8 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop