生徒会の恋愛事情


「すいません。
お邪魔する気はなかったのですが…沙羅ちゃんがこれを忘れていったみたいで。」


弥先輩はあたしのお弁当箱を持っていた。


…こんな日に忘れ物をした自分を呪いたい。


弥先輩はあたしに近付くと、お弁当箱を手渡してくれた。


「あの…」


「じゃあ僕はこれで。
お取り込み中に本当にすいません。」


弥先輩はあたしと光唆を交互に見ると、去っていこうとする。


「あの!
弥先輩!」


光唆が顔を真っ赤にして、普段よりも大きな声で叫ぶ。


「大丈夫ですよ。
言いふらすなんて不粋なまねはしませんから。
…あと、生徒会は恋愛禁止じゃないんで安心して下さい。」


近くにいるはずの弥先輩の声は、随分遠くから聞こえるような錯覚に陥る。


誤解だ、何か言わなきゃ。


あたしは焦る。


早く何か言わないといけない。


でも、あたしは一言も発せられなかった。


そうしている間に、弥先輩は行ってしまった。



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