ただ、名前を呼んで

見返りなんて求めてない。そう言い返したかったけど、何も言えなかった。

だって、僕は思ってたから。

『こんなに想ってるんだから、いつかお母さんも僕を想ってくれれば良いのに。』

何も求めずに想い続けるというのは、とても困難で。

だけどやってみよう。
純粋に母を大切に想うだけ。

強い男になりたいから。

ひとより少し弱い母を守れる男になりたいから。


キッチンから祖母と祖父がやってきた。

祖母はトレーに三人分のコーヒーを用意していた。
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