ただ、名前を呼んで

祖父はフォークをカチャンと置くと、真面目な顔をして僕を見た。

普段は温和で渋い感じの祖父の目が、僕の視線を捕らえる。

口を開いた祖父の言葉に、僕は耳を疑った。


「拓海。もうカスミさんに会うのをやめないか。」


会うのをやめるだって?
なんだよ、それ。

良くなってきた所なんだ。今、会いに行くのをやめろなんて、酷すぎるだろ。


「何でさ。嫌だよ。」

「お前が辛くなるかもしれないだろ。」


頑なな表情を見せる祖父。
祖母は柔らかい卵をフォークでふにふにとつついている。
< 18 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop