ただ、名前を呼んで

「何が辛いって言うのさ。」

「忘れたのか?カスミさんは、お前を分からないかもしれないんだぞ。」


祖父はやるせなそうに顔を歪めて僕を見る。そんな祖父を前に、僕は黙るしかなかった。


忘れてないさ。
だけどもしかしたら分かるかもしれないだろ?

大人はいつも安全圏に居ようとする。傷付くことを恐れて。

僅かでも希望があるのに、どうしてそれを信じようとしないのか。僕には分からない。

そういう意味では、僕は凄く子供らしいのかもしれない。
< 19 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop