ただ、名前を呼んで

「今のままじゃ、苦しめることしか出来ないから。いつかお母さんの傷が癒えた時、もう一度会いたい。」


離れることは寂しいけれど、この気持ちは嘘じゃない。

内藤さんはほんの少し目に潤いを含ませながら、「ありがとう。」と言った。


移動の日が決まったら連絡すると内藤さんは言ったけど、僕は見送りに来るかは分からない。

母が遠くに行ってしまうのを、拒まずに見送る自信はないから。


お母さん。
僕は待ってるよ。
全てを受け入れられるまで。
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