ただ、名前を呼んで

凄く急いでいるのに、身体が鉛になったみたいに重い。

それか、ただ時間の流れが遅いのか。
まるでスローモーションにかかったみたいだ。


扉に辿り着くと、グレーのコンクリートのずっと向こう。

錆びたフェンスを越えた所に、母は居た。


艶やかな黒髪をしなやかに風になびかせて。



母は飛んだ。



一瞬僕を振り返ったように見えたのは、ただの幻だろうか?
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