ただ、名前を呼んで

ぼんやりと過ごす日々が続いた。図書館にも行かないし、必要以上に部屋から出なくなった。

このまま腐っていくのかもしれない。

それで母に会えるなら、それでも良いかもしれないとさえ思った。

だけどそうもいかず、ある日祖父が部屋に押し入って来た。


「拓海、しっかりしなさい!」


クッションに顔をうずめていた僕は祖父の怒鳴り声に顔を上げる。

そこには悲しそうに顔を歪めた祖父が居た。


「じいちゃん……。」


祖父は僕の頭をポンと叩いた。
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