ただ、名前を呼んで
「じいちゃんは、拓海って呼んでくれるのにね。」
「どういう意味だ?」
手元にあるクッションに顔を押し付け、僕は弱々しく呟いた。
「お母さんにも……呼ばれてみたかったよ。」
祖父は僕をクッションごと抱きしめてくれた。
息が苦しくなるくらい、強く。
すると突然祖父はハッとして僕を離した。
「じいちゃん?」
「待っていなさい!」
そう言い残して祖父は僕の部屋から出て行ってしまった。
開け放たれたドアがゆらゆら揺れる。