ただ、名前を呼んで
俯きながら、トボトボと進める足元。
目が止まったのは、踏み潰されて羽が汚れた紋白蝶。
力尽きたのか、たまたま車などに踏まれたのか。
汚れた羽はもう羽ばたくこともできずに、微かに風に揺れるだけ。
胸が苦しく詰まる。
どうしようもない悲しみ、怒り、絶望、憎しみ。
そして、愛しさ。
汚く溢れる感情を処理しきれずに、僕は泣いた。
花を見つけられなかった憐れな紋白蝶をスニーカーで踏み付ける。
僕はそのスニーカーの底を減らすように、力いっぱい踏み締めながら走った。