ただ、名前を呼んで

祖母の大きな愛を感じて、僕は唇を噛み締める。

肩が小刻みに震えるので、祖母が腕を回してくれた。


「お母さんが喋ったんだ。」


祖母は驚いたように僕を見た。僕の方が背が高いので、祖母は見上げなければならない。


「一言だけど、ちゃんと“言葉”だったよ……。」


声がみっともなく震える。
抑え切れなかった涙がボロボロと零れる。


「カスミさん、何て言ったの?」


祖母が回した腕で僕の身体を優しくさすりながら問う。
< 49 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop