ただ、名前を呼んで

「言葉には気を付けなさい。それと、もうここへは来なくて良い。」


は……?
突然現れて何を言うんだ。
今まで僕が毎日通ったって言う事実を、そんなに簡単に切り捨てるなんて。


「最近カスミの状態が良いらしい。別の施設に移して、私達が面倒を見ることにした。」


握りしめた手の平に、じわりと不快な汗が滲む。
強く握りすぎて爪が食い込んでいるのが分かる。

毎日毎日、僕は母を見続けていたんだ。
母は僕が支えてあげたいんだ。

傲慢な祖父の言い分をすんなり聞けるはずなどない。
< 63 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop